恵美が独断で選ぶ
2008年の栄えある歴史書の第一位は
田中広明氏の『豪族のくらし』(すいれん舎、2400円+税)
です。パチパチ

豪族のくらし―古墳時代~平安時代

豪族のくらし―古墳時代~平安時代

  • 作者: 田中広明
  • 出版社/メーカー: すいれん舎
  • 発売日: 2008/11/14
  • メディア: 単行本
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古代でありながら、天皇ではなく豪族をテーマにした一見地味な本ですが、なにより説明が抜群に分かりやすい。
専門家が書く「入門本」は無数にありますが、単に「ですます」調なだけという本が多い中で、本書は真の意味で懇切丁寧。

後書きを読むと、理系の高校に進む息子がもう日本史を学ぶことはないという寂しさと焦燥にかられて執筆したようです。
また、発掘作業をするアルバイトの地元の女性たちに自分たちがなにをしているのかを知ってもらうため、ともありました。
こうした高い志(学界に向いているのが高い志とは必ずしもいえない)に裏打ちされた熱い本でもあります。

とりわけニヤリとさせられるのは、第一章の明日香の蘇我入鹿邸と大々的に発表された甘樫丘東麓遺跡への疑問です。
私も現地をみて「こんな狭いところに邸宅なんかあるんか」と首をひねっていた経験があるのです。(あまりに狭い谷でなかなか見つからなかったくらい)
寡聞にしてだれもそうした怪しさを公式の場面で突っ込んだことを知らなかったので、思わず膝をうちました。

古代史や考古学に興味がある人だけでなく、むしろ専門家のかたに、いろいろな意味で「勉強」していただきたい必読の一冊です。

第二位は、
鈴木浩三氏の『江戸商人の経営』(日本経済新聞出版、1800円+税)

江戸商人の経営

江戸商人の経営

  • 作者: 鈴木浩三
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2008/05/21
  • メディア: 単行本
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江戸時代はすごかった!という話は最近、腐るほどありますが、

江戸人のモラルは高かったんだよ。
なんで?
時代小説を読めばそうじゃん!

のようないい加減にしか見えない論拠もまかり通って、そっちこそいい加減にしろと思っていたところに本書が登場しました。

江戸時代の優れた経済の実態は、現代の金融工学を駆使したかのようなデリバティブな世界。
かたや、市場経済の暴走を押し止める役割を果たしたのが、官ではなくむしろ当事者の商工業者たちという視点は斬新です。

やればやるほど悪くしてしまう霞ヶ関や永田町のみなさんや、逆説の日本史ファンにぜひ読んでいただき、真の歴史の教訓とおもしろさを知っていただきたいです。

第三位は
平川南氏の『新視点古代史 日本の原像』(全集日本の歴史第二巻、小学館、2400円+税)

日本の原像 (全集 日本の歴史 2)

日本の原像 (全集 日本の歴史 2)

  • 作者: 平川南
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2008/01/26
  • メディア: ハードカバー
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甲斐、出羽、相模などの東日本の旧国名が中央政府によって人為的につけられた割と新しい名称だったという説には驚愕すること間違いなし。

では、それ以前の名前はなんだったのでしょう。在野の歴史研究者たちがこの本を読んで、ぜひ古墳時代までの「本来の地域の名前」を捜し当ててほしいものです。

第四位は
秋田茂、桃木至朗氏の『歴史学のフロンティア』(阪大リーブル、2000円+税)

歴史学のフロンティア ‐地域から問い直す国民国家史観‐ (阪大リーブル)

歴史学のフロンティア ‐地域から問い直す国民国家史観‐ (阪大リーブル)

  • 作者: 秋田茂,桃木至朗
  • 出版社/メーカー: 大阪大学出版会
  • 発売日: 2008/10/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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新しい世界史とでもいうべき意欲作。
歴史本で図解というのは、(我々の本もです)今や必須アイテムですが、正直、過去の国境線や県境(国と国)をきちんと表現するなど不可能。
なぜ無理かというと、国境線が時代によって移動する、からではなく、むしろ国境は線というよりも点だったから。

竹島・独島論争も実は歴史的にどちらかに軍配をあげることは不可能なわけです。というのも、まさに「盲点」だったからです。
それはともかく、線をひかずに歴史を語れるのかというチャレンジは注目です。

第五位は、
鈴木拓也氏の『蝦夷と東北戦争』(戦争の日本史、吉川弘文館、2500円+税)

蝦夷と東北戦争 (戦争の日本史)

蝦夷と東北戦争 (戦争の日本史)

  • 作者: 鈴木拓也
  • 出版社/メーカー: 吉川弘文館
  • 発売日: 2008/12
  • メディア: 単行本
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エミシ小説の高橋克彦氏の火怨 上 北の燿星アテルイ (講談社文庫)
に代表される抑圧された、ヤマトとは違う誇り高き民族「エミシ」という史観は、戦後の歴史学によって「発見」され、それが高橋克彦氏の小説に盛り込まれたという流れです。

そのため、フィクションの世界ではあるけどそれなりに真実味があるのかなと考えてきましたが、最近の歴史研究はさらに一歩進んだ「エミシ」像に到達しているようだということが、この本を読んでわかりました。

まだ、この新しいエミシ像は小説になっていないので、早いものがちかもしれません。
小説家志望の方は必読ですw。

そして、いよいよ最高番外賞「裏のベスト1位」の発表です!
アマゾン古代史ランキング1位を記録した恵美嘉樹の『図説 最新日本古代史』(学研、1500円+税)です。

図説 最新日本古代史

図説 最新日本古代史

  • 作者: 恵美嘉樹
  • 出版社/メーカー: 学習研究社
  • 発売日: 2008/10
  • メディア: 単行本
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なぜって? 自分の本だからです。我が子はかわいいので、自分の中では2008年のナンバー1ですw。

ぜひ、2008年のベスト5とともに我々の本も読んでくださいませ。
(本のダイジェストは2008年10月28日の日記にながーい記事で載っています)

2009年はどんな知的興奮をくれる歴史本が登場するのでしょうか?

(ちなみに裏のベスト1は、2009年も恵美の本(出版予定)になることが内定していますのでよろしくお願いしますw)

では、みなさんよいお年を!